目の前の光景を見て
私はただ
あぁめんどくさいな
とだけ呟いた


めんどくさい恋愛


目の前にお菓子を広げたお菓子に手をつけながら
興味なさ気に机に肘をつき目の前で繰り広げられている光景を見る
(お菓子を食べるのも面倒くさくなってきたなぁ…)
がさごそをお菓子を漁っていた手を止め
ふぁと小さく欠伸を噛み殺す
最近ある小説にハマってろくに寝てなかったのだ
途中で読むのを止めるのもめんどくさいなんて思っていたが
睡眠を削るのはよくなかっただろうか
今日はきちんと寝よう
そう決心し椅子からかたりと立ち上がる
それと同時に何かが机に叩きつける音がし視線を上げる

「さっきから聞いているの!?!!!!!!!」

ヒステリックに叫んだブロンドの美少女が瞳に映つり
私は小さく小さく溜息を吐いた
その態度が気に食わなかったのか綺麗な形の眉が更に吊り上がった

「先程からぎゃーぎゃーと騒いでいたのは耳にしていますが」

明らかに馬鹿にした私の言葉に
美少女はキッと怒りでぎらぎらした瞳を此方に向け
私の方に向かってきたかと思うと胸倉を掴まれる
(美少女なのにお行儀が悪いなぁ…)
ぼーっとそんなことを思っていると美少女が噛み付くように言葉を放つ

「シリウスを返しなさいよ、この雌狐!!」

この言葉が上手く頭に伝わらず
ふらふらと視界を漂わせていると黒髪の無駄に整った顔のシリウス・ブラックを見つける
シリウスは私と目が合ったかと思うと意地の悪い笑みを浮かべた
その笑みと彼女を見た瞬間あぁなるほどという言葉が浮かんだと同時に
再びあぁめんどくさいと呟いた
そして胸倉を掴んでいた美少女を突き飛ばすと彼女が小さくよろけ戒めが解ける
突然のことに驚いた顔の少女を一瞥し今度は盛大に溜息を吐いた

「わかった」
「え?…ちょっと待ちなさいよ!」

呼び止める彼女の言葉も聞かずすたすたと壁に凭れ掛かっていたシリウスの前へと立つ
シリウスはと言うと私の行動を予想していなかったのだろうか
大きく目を見開いてこちらを見ていた

「もう君いらないから。ばいばい」

私はそれだけ言うと談話室を後にし自分の部屋を目指す
こんな面倒くさいことに構っている暇はない
私は睡眠を貪りたいのだ
(恋愛なんてほんとめんどくさいだけだったな)
その面倒くさい恋愛をしたことに深く後悔する
別に恋愛全般を面倒くさいものだと言っている訳ではない
私が言いたいのはただ彼
シリウス・ブラックとの恋愛が面倒だということだ
シリウスは確かに容姿端麗・頭脳明晰と素晴らしい男だが
女癖が悪く女関連のいざこざが絶えない
そんな面倒くさい恋愛の代名詞のような男と何故私は付き合っていたのだろう
ふとそんな疑問が思い浮かび足を止める
暫く考えていたがそんなこと今更考えても仕方ないと思い再び足を動かそうとすると
強い力が私の手首を掴み私の歩みを止める
ちらりと振り返ると少し乱れた黒髪を捉えた

…っ!」
「…なに?」

私は寝たいの用事があるなら早くして
そう煩わしそうに急かすとシリウスの眉間に皺が寄った

「いらないってどういうことだよ?」
「……ほんと恋愛って面倒」
「は?」
「あーいうの面倒なの。だから別れる」

私が面倒な事が嫌いなの知らないとは言わないわよね
そう意味を込めてにこりと笑う
その言葉を受けてシリウスはというと俯いていて前髪に表情が隠れて見えない

「じゃぁ私行くから」

そう言い残し今度こそ立ち去ろうとすると
先程より強い力で掴まれた
いい加減にいらいらしてきて何か言おうとするが
私の言葉は飲み込まれ呆然とただシリウスを見つめる
瞳に映るのは切なげで今にも泣きそうな表情だった

「……

その声もその表情も
私が彼と付き合ってきた中でまったく見た事もないもので
私の声を奪うには十分で―――

「行かないでくれ」

お願いだから
そう言って引き寄せられきつくきつく抱き締められる
そして顔が埋められている肩口に温かいものを感じ
ふと顔が緩むのがわかり彼の名前を呼ぶ

「私面倒なこと大嫌いで君の女関係に巻き込まれるのも大嫌いなの。だから別れたいの」
「………」
「だけど…ねぇシリウス」

私は埋められている顔を覗き込むと
涙と不安でゆらゆらと揺れている黒い瞳が見える
(あぁ、なんて―――)
シリウスの顔に指を添えるとぴくりと動くが逃れることはなく
私はその頬を包み込むように両手で覆う

「だから私が面倒だと思わないように私だけを見ていて」

そう言って触れるだけのキスを贈った
すると不安の色をしていた瞳が驚きで見開かれぴしりと固まる
その表情に満足するように私がくすくすと声を立てて笑うと
頬に添えられていた手を掴まれ指先にシリウスの唇が落ちた

「俺とめんどうな恋愛しませんか?」


容姿端麗で頭脳明晰で女癖が悪い彼
本当に彼との恋愛は面倒で嫌になる
だけど実は一途で寂しがりやな彼が愛しくて
彼とならこんな恋愛をしてもいいなんて思ってしまった












ひたすらシリウスがへたれ
07/03/22







SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送