教室までの長い長い廊下
私は小走りになりながら前を長い足で歩く少年を追いかけている
何度となく名前を読んでいるが全く反応はない
いや全くと言うのは間違いで
名前を呼ぶたびに速度が速くなっているような気がする
気のせいでなければだけど

Do You Know?

「…ッブラック!」

止まりなさい!
走りながら私の前を歩くブラックを大声で呼ぶ
先程から何度も繰り返しているこの光景
最初は周りの生徒がひそひそと言っている声が聞えていたが
必死な為その声すらも今では耳に届かなくなっていた
いい加減体力の限界だ
そう思い立ち止まって肩で呼吸する
その度にさらさらと肩口まである漆黒の髪が揺れた
髪が視界へと入る
(ちょっと痛んでいるなぁ)
なんて思っているとゆらりと影が被ったのが見えて
ふと顔をあげると端正な顔が瞳に映る

「やっと立ち止まったのね、ブラック」

そう言って小さく笑うと
ブラックの綺麗な眉が吊りあがり眉間に皺が寄る

「……
「なに?」
「毎回毎回その呼び方はやめろと俺は言ってるよな?」
「そうね」

ブラックは自分の家を嫌っていて
自分のことをブラックと呼ばれるのを嫌い
周囲にはシリウスと呼ばせている
というかブラックと呼ばないのが暗黙の了解というやつで
読んでいるのは先生や私くらいなものであった
そして私は毎度呼ぶのをやめろと言われ続けているのである

「なんでやめない?嫌がらせか?」
「違うわよ」
「じゃぁなんなんだよ」
「日本では親しくもない異性をファーストネームでは呼ばないのよ」

私の言葉にブラックは何か言い返そうとしたが
あえて私は無視をし手に持っていた物を押し付ける
突然の事で驚いたのかブラックは拒否することなく大人しくそれを受け取った
手に持ったものをまじまじと見つめている姿が面白く思わず笑いそうになってしまう

「……本当にそれだけだと思う?」
「なにが?」
「…なんでもないわ。
それあなたのノートよ。図書室にあったの」
「…サンキュ」

どこか腑に落ちないように言うブラックに
私は気づかれないようにこっそりと溜息を吐いた
そして踵を返そうとする彼を呼び止めると
ノートがこちらへと飛んできたので
私は目の前でそれを捕らえそれを持ち主の方へ投げて遣す

「危ないじゃないの、ブラック」
「…シリウスだ」
「じゃぁもう二度とあなたの名前を呼ばないってことでいいかしら?」
「な……っ!」
「なにか問題でも?」
「…っもう好きに呼べばいいだろ!」

怒ったような顔をしそう告げたブラックは
今度こそ踵を返し己が受ける授業が行われる教室へと向かった
そんな彼を見て私は思わず笑みを零してしまう

「馬鹿ね」

意味もなく嫌な呼び方をする訳がないじゃない
嫌いな人ではなくまして好かれたいと思っている人に
ただ嫌なのだ
他の人と同じなのが
同じように呼んでいたら私なんて彼の目に止まることなんてないだろう
周りに居る女1で終わっていたと思う
そんなの悔しいじゃないか
だからわざわざ彼の嫌がる呼び方で呼ぶのだ
その分たくさんの愛情を込めて
まぁ、そんなことあなたはきっと知らないだろうけどね!





○おまけ○
「…なんなんだよあいつ!」
「どうしたの?」
「なんでもない!」
「まぁたにファーストネームで呼んでもらえなくて怒っているそうだよ」
「おま…っ!」
「僕たちは呼んでもらえてるのにね」
「だね」
「…俺嫌われてんのかな」
(馬鹿だ)
(鈍い)
(シリウスを呼ぶときの彼女の表情を見ればわかるのにね!)













ジェームズやリーマスはこういうことに結構敏感だと思う
07/03/23







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