泣くということ




涙をぽろぽろと流しながら先程まで”彼女”だった少女が去っていく
その背を眺めながら俺は深い溜息を吐いた
先程までざわめいていた図書室は彼女が去ったことにより元の静けさが戻ってきている
まだひそひそと何か言っているものもいたが毎度のことの為大半のものは再び己の目的の為の行動をとり始めた
再び深い溜息を吐いた俺の頭に鈍い衝撃が襲う

「…って!」
「相変わらずの女泣かせですわね、ミスター・ブラック」

振り返ると片手に本を持ちにやりと笑いながらが立っていた
そして痛がる俺に悪びれる様子もなく失礼、と俺の前の席に座る
は同学年のエバンズの友人で
その繋がりもあり俺たちともよく行動を共にしている
は他の女と違い媚を売ることもなく
寧ろ先程のように俺のことを平気で殴れるようなやつで
最初はなんだこいつ、など思ったが
今では気軽に話せるいい女友達である
そんなに怒気を含めた視線を送るが本人はどこ吹く風で
無駄なことをしている自分が馬鹿らしくなり
暫く本に目を落とすを見ていたがふと口を開いた

「なぁ、なんで女ってあんなぴーぴー泣くんだと思う?」
「は?」

いきなりの問いかけには読んでいた本から視線を俺へと移し
なにがどうしたというような顔をしている
そんなに泣くなんてだせぇじゃん、と付け足すように言うと
暫く思案している様子を見せたあとふっ、と笑った

「…あんた馬鹿だねぇ」
「おま…っ!」
「だって泣くって凄いんだから。
嬉しいと悲しい、相反するものが涙1つで表現できちゃうでしょ?
それに泣くって自分の感情を相手に吐露しちゃう行動でもあるの。
それって凄いと思わない?」

ほら
彼女の涙だって
あなたが愛しいけど憎たらしいって
と怪しげに笑う彼女にぽかんとしていると
それが気に食わなかったのか眉間に皺を寄せた

「なによ」
「いや…お前がそんなことを言い出すなんて意外だなぁ、と」
「尊敬してもいいわよ」
「…遠慮しておく」

俺の台詞にノリわるーい、と言うと
再び本へと目を落とし始めた
ぱらぱらと白い指で捲くられるページ
文字を追う瞳
それらを見ているとなんだかむず痒いものに襲われる

「なぁ」

それを誤魔化すようにに声をかけると
今度は本に目を落としたまま彼女は返事を寄越す

「お前も泣いたりするのか?
…誰かを想って」
「まさか。今現在そんな夢中になれるような人はいませんよ」

いったんは俺の質問で文字を追っていた目が止まったが
さらりと答えると再び文字を追い始める
長い睫毛が影を落とした

そんな彼女を見て俺は無性に
泣かしたい
と思ってしまった

嗚呼
君の涙は
俺に何を伝えてくれるのだろう













泣くって凄いことだと私は思います
07/07/09







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